女性「9条の会」ニュース43 号 2018 年3 月号

 

1面  

   「公正と信義が出合うとき                                    浜 矩子(経済学者・国際経済学)

                                                                                              

 日本国憲法の前文に、次の一節がある。
 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
 素晴らしいと思う。特に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」が目を引く。公正と信義が出会っているところがいい。公正だけなら、それを要求する人は多い。「アメリカ・ファースト」を振りかざすドナルド・トランプ氏も、「強い日本を取り戻す」と叫ぶ安倍晋三氏も、声高に公正な取り扱いを要求するだろう。
 ひたすら、相手に公正を求める主張と主張がぶつかり合えば、そこに生じるのは軋轢であり、敵愾心だ。
  だが、そこに信義がもたらす清廉さが伴えば、人々は相手に公正さを要求しなくなる。そうではなくて、相手に対して公正であろうと努めるようになるだろう。公正と信義が出会い、抱き合うことは、実に大切なことだ。
 そのような公正と信義の抱き合いに信頼を委ねて、「われらの安全と生存を保持しよう」。日本国民はそのように決意した。このように宣言している憲法前文は、グローバル時代の正しい生き方を我々に示してくれている。そういえると思う。日本国民は、その安全と生存を、決して武力によって保持しようとは考えない。力によって守ろうとは思わない。平和を愛する諸国民の公正と信義に、自らの安全と生存を委ねる。何という心意気。何という勇気。この心意気と勇気がグローバル社会の津々浦々で共有されれば、人類は、いまだかつてなく輝かしい日々を一緒に紡ぎ出して行くことが出来るだろう。この驚くべく貴重な財産が、憲法の一環として日本人の手に託されている。何たる幸せ。何たる責任。
 この幸せと責任を我々は深く深く噛み締め続けて行かなければならない。
信義なき公正を他者からもぎ取ろうとする人々にとって、日本国憲法はさぞや邪魔者なのだろう。安倍首相があそこまで憲法改正に固執する理由が、つくづく良く解った気がする。 世紀版大日本帝国の総帥たらんとする彼には、平和を愛する諸国民の公正と正義への信頼に、自らの安全と生存を委ねるなどということほど、耐え難い屈辱はないのだろう。信義なき公正を追求する者は、臆病者だ。臆病だから、虚勢を張る。臆病だから、攻撃的になる。臆病者の世界は、日本国憲法の世界から実に遠いところにある。少々、かわいそうになって来た。
かわいそうだが、許すわけにはいかない。臆病者たちの攻撃性が、我らから安全と生存を奪い取る。そのような事態を阻止するために、日本国民は声をあげ続ける。決してあきらめることがない。生まず弛まず、公正と信義の出会いを追求する。臆病者の性急さは、平和を愛する者たちの粘りの前に砕け散る。

 
                                       

2面〜6面      女性「9条の会」憲法学習会    ─抜粋しています─    
                                                                                                 
 日時 2018年1月19日  於 津田塾大学

        9条改憲は市民生活にどのような影響を及ぼすのか     
         
           
 講師 山内敏弘さん(一橋大学名誉教授)


■はじめに
 安倍首相は、今年の1月4日に、「今年こそ憲法のあるべき姿を国民に提示、憲法改憲に向けた国民的な議論を一層進めていきたい」と述べました。自民党幹事長は今年中に発議したいとまで言っています。憲法は今最大の存亡の危機を迎えたことになります。
 その背景には、去年10月に国会を解散して総選挙が行われ、改憲に必要な政党が衆議院の八割という圧倒的多数の議席を獲得したことがあります。
 安倍首相は、昨年五月三日には九条一項と二項はそのままにして三項に自衛隊をつけ加えるという形の改憲を考えていると発言。12月には「論点整理」が行われ、九条に関しては
①安倍首相が発言したように、1項と2項を残したまま3項に自衛隊を明記する。
②2項を削除して自衛隊の目的・性格をより明確にする。
という案が出されています。
 ②は2012年に自民党が発表した改憲草案の意見です。また、①②とも文民統制の考え方を入れるとしています。
 現在は、自民党の中では①の安倍首相が発表した考え方が有力になってきています。しかしながら国民世論と政権与党の考え方にはギャップがあり、つい最近の世論調査では「安倍首相の下での改憲に反対」が54・3%、「賛成」は33%で、過半数は反対というデータになっています。
 改憲反対の声が強くなれば、いかに国会で改憲勢力が多数を占めていても改憲発議を行うことはできないだろうと思います。そういう状況で国民投票をして「改憲に反対」が多数になれば、これから先10年や20年は改憲はできないということになります。ですから国民の声を無視した国会発議をさせないために、私たちは反対するのです。あくまでも九条の1項2項を維持し、発展させるというスタンスで運動を展開させなければならないと思います。


■九条2項の空文化─「後法は前法に優先する」

  安倍首相は「三項加憲によって、自衛隊の任務や権限に変更は生じない」また自民党憲法改正推進本部長保岡氏は「九条の政府解釈を一ミリも動かさないで自衛隊を位置付ける」と言っていますが、これは嘘です。
 九条の三項に自衛隊を加憲したときに、自衛隊の任務権限や、憲法九条の解釈が一ミリも変わることがないなどあり得ない。一ミリも変わらないなら変える必要はないのです。
 法律の世界の法原則として、前につくられた法規と後につくられた法規が矛盾する場合は、後でつくられた法規が優先されるのです。それは直近の立法者の意思が尊重させなければならないからです。
 憲法学者の大多数は、「陸・海・空一切の戦力はこれを保持しない」という規定と、自衛隊の存在を認める規定の間には矛盾があり、その場合は三項を優先した形の解釈がなされるということになると考えます。
 従来政府は「自衛隊は戦力ではない」と言ってきました。戦力ではなく、戦力に至らざる自衛のための自衛力だと、自衛隊がつくられてから今日に至るまで一貫してそう解釈されてきました。自衛隊が三項に加憲されたときに、その解釈が維持されるのかどうかが問題ですけれども、安倍政権は今、トラ題ですけれども、安倍政権は今、トランプ大統領の要請に従って巡航ミサイルの導入を図り始めたり、表向きは護衛艦と呼ばれているヘリ空母を、戦闘機を搭載する攻撃型空母に変えようとしているし、イージス艦、オスプレイ、パック3、イージスアショア、ステルス戦闘機などの大量の兵器を購入する計画を進めています。従来の自衛力論では他国に対して侵略的な脅威を与えるような兵器は持てないので、ICBMや攻撃的空母などは持てないことになっていました。でも安倍政権の下で九条改憲がなされる前に、既にこういう形で専守防衛の枠を超える兵器導入が検討されているのです。
 こういうことを踏まえた上で、自衛隊が三項に加憲された場合、二項で保持を禁じられた戦力は、あくまでも「侵略のために保持を禁じられただけ」であり、「自衛のための戦力は禁じられていない」ということに変わっていくことになると思います。 核兵器についても「自衛のためのものならあながち禁止されているわけではない」という言い方だったのですが、最近は半ば公然と非核三原則の見直しが論じられ、提唱されています。
 そこまで行ったら、九条の二項の「戦力の不保持」が形骸化して、例え②のような「我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織」という表現であっても、全面的な集団的自衛権の行使につながっていくと思います。「他衛は自衛」と彼らは言います。アメリカを守ることは日本を守ることに通じる、我が国を防衛するためにはアメリカを防衛する必要があるという話になってきています。 結局は「戦力」は「自衛戦力」に変わり、「自衛権の行使」が個別的自衛権から「集団的自衛権」に変わる。そして専守防衛という建前もかなぐり捨てる、あるいは専守防衛のためにアメリカを防衛するのだと言いかねないと思います。

■国民の生活・人権に重大な悪影響をもたらす「3項加憲」

 三項加憲によって軍事優先になっていかざるを得ないと思います。そして国民生活よりは軍事が優先される発想が強くなっていくことになると思います。これは否定しがたいと思います。
 「三項に明記された自衛隊」は水戸黄門の印籠として、これに国民は従え、少なくともこれを優先せよという形に意識も性格も変えられてしまうということを私たちは覚悟しなければいけないと思います。

①徴兵制

 現在政府は「徴兵制は憲法違反だ」と言っています。その根拠は九条ではなく、憲法13条と18条です。13条は「公共の福祉に反して、人権を制限してはならない」、18条は「意に反する苦役に国民を服させることはできない」と書いてあります。つまり今の公共の福祉の考え方からすれば、徴兵制は意に反する苦役となる。あるいは不当な人権侵害になるから徴兵制は憲法違反だということになります。
 その考え方からすれば、もし九条の3項に自衛隊が加憲された場合は、自衛隊の存在は「憲法的な公共性」を持つことになります。従って自衛隊のための役務の提供は、軍事的な公共性に合致することになります。だから徴兵を強制することも許容されることになります。少なくとも憲法違反ではないということになります。現実に徴兵制が敷かれるかどうかは時の政権の考え方によりますし、AIの時代に生身の人間は必要ないだろうという考え方もあります。しかし、自民党の2012年の憲法草案には、国民の「国防の責務」が書いてあります。法哲学の井上達夫氏は「軍隊を持つ以上は徴兵制を持つべきだ」と言っています。彼の主張は「国民に国防の責務を持たせる必要がある。自衛隊頑張ってください、私たちは知らないよ」ということになってはまずいから徴兵制は必要だと言っています。実際に徴兵制を実施するかどうかというよりは、九条3項加憲によって徴兵制を可能とする解釈が出てくる、憲法解釈の明らかな変更ということになるわけです。
 「徴兵は命かけても阻むべし 母 祖母 おみな牢に満つるとも」この歌が現実味をおびてくる時代になりつつあるのではないかと思います。

②自衛隊基地建設のための強制的な土地収用

 戦前は、軍事基地をつくるためには住民の土地を強制的に収容することができました。戦後の「土地収用法」は3条に、国民の土地を正当な補償の下に強制的に収用することができる公共事業として、学校、道路、港湾、鉄道などが挙げられています。その条項の中には自衛隊の基地建設は書いていません。公共の利益とは言えないからです。
 ところが1951年に日米安保条約が結ばれ、その下で行政協定が結ばれ、行政協定の下に「米軍用地特別措置法」という法律がつくられて、米軍の基地建設のためには強制的に土地収用ができることになりました。
 今、砂川闘争裁判の最終法廷が開かれていますが、安保の下で米軍だけは別扱いということで、沖縄でもあのような問題が起きているのです。しかし、自衛隊についてはそういう規定はないわけです。だから百里基地では土地収用を拒否する地主のために滑走路がくの字になっているわけですが、3項加憲でそういうことはできなくなります。自衛隊のための強制的な土地収用が可能になってきます。つまり、軍事的な公共性のためには国民の私有地は犠牲に供して良いという形になっていくわけです。土地収用が憲法上可能になるわけです。

③自衛隊基地訴訟への影響

 もちろん、自衛隊をめぐる違憲訴訟はできなくなってきます。2016年の厚木基地公害訴訟で、1審、2審で出された夜間飛行禁止の命令は破棄され、最高裁は住民の夜間飛行差し止め請求を棄却しました。その理由は自衛隊機の運行は高度の公共性と公益性を持っているからというものでした。
 私たちは、この判決を今の憲法九条の下では「けしからん」と言えるわけです。だから厚木や沖縄の人達は夜間の運航差し止めを更に要求する訴訟を提起するのです。米軍についてはなかなか難しいと思いますが、自衛隊機についてはこれからも運航を巡る訴訟を提起していくだろうと思います。しかし、3項に自衛隊が明記された場合は、自衛隊は高度に公共性を持つわけですから、夜、眠れないくらいは我慢をしなさいということになります。

④軍事機密が横行する社会の到来

 2013年に秘密保護法がつくられて、軍事に関する秘密は特定秘密に指定されることになりました。しかし私たちは憲法に照らしておかしいのではないかと主張しています。 昨年PKOの日報問題で、防衛大臣が答弁に窮するようなことが出てきました。
  日報の黒塗りされたものが、国会に出てきて検討がなされたわけですが、自衛隊に関することは憲法上のマル秘ということにされて、「日報」などは全面不開示となると思います。戦前は天気予報でさえ軍事機密とされ、地図ももちろん機密でした。3項加憲によって、防衛に関する秘密が合憲とされる結果、国民の知る権利や報道の自由は著しく制限されることになると思います。
 秘密保護法では漏洩したものは10年以下の懲役、漏洩したものだけでなく情報を取得した我々も同様な罰則が課せられることになっていますから、大変な圧力を持つものと思われます。3項加憲によって我々は「見ざる、聞かざる、言わざる」にならざるを得なくなるわけです。

⑤軍事費の増大と社会保障費の削減


 自衛隊が3項に書かれた場合は、力関係が官庁の中でも自衛隊が強くなって、軍事予算は歯止めがきかなくなり、うなぎ登りに上がって、相対的に社会保障等は削減されていくでしょう。厚生労働省は今でさえ、官庁の中での序列は高くないわけですから、ますます頭が上がらなくなっていくに違いありません。生活保護の受給者からは、「もう切り詰めるところが何もない、どこを切り詰めたら良いのかわからない」という悲痛な声が聞こえてきていますが、生存権はますます脅かされることになっていくでしょう。

⑥軍産複合体の形成、「死の商人の台頭」 

 武器輸出三原則から防衛装備移転三原則への移行を踏まえて、軍産複合体がアメリカのように形成されていくものと思われます。軍学共同によって学問の自由や、大学の自治も制限されることになると思います。

⑦自衛官に対する軍事規律の強化

 安倍首相は「『自衛隊は違憲かも知れないが命を張れ』と言うのは無責任」、小学校の子どもが「お前のお父さんは違憲なところにいるんだと言われるのはかわいそうだ」と言って、三項加憲を言っているわけですけれども、加憲された場合は海外に出て行って、おそらく戦死者が出るでしょう。殺し殺されるところに行くのですから。
 私たちはこれまで、自衛隊の海外派兵は憲法違反ではないかと言ってきました。だから自衛官は海外で死ぬことはなかったのです。自衛官が紛争で死ぬことがなかったのはやはり九条があったからです。九条が自衛官の命を守ってきたのです。三項に自衛隊が加憲されれば自衛隊は海外で戦死するでしょう。安倍さんはそういうことをはっきりと言うべきです。それを言わないで自衛隊が違憲扱いされるのはかわいそうと言うのは、おかしいわけです。 

靖国神社の国家護持化

 今自衛隊の加憲を推進している人達は、「自衛隊ありがとう」という運動をしています。これは「自衛隊員さん死んでありがとう」ということになると思います。その後どうなるかというと、やっぱり「国民も死んで下さい」ということになります。そして「死んだ人達は靖国神社に祭りましょう」という話になって、靖国神社の国家護持化が一層推進していくだろうと思います。そうなれば信教の自由や、政教分離の影響は少なからず出てきます。このような影響が出てくることを踏まえて私たちは考えていかなければならないと思います。

北朝鮮問題と核抑止論

 安倍首相は「『自衛隊は違憲かも知れないが命を張れ』と言うのは無責任」、小学校の子どもが「お前のお父さんは違憲なところにいるんだと言われるのはかわいそうだ」と言って、三項加憲を言っているわけですけれども、加憲された場合は海外に安倍首相はとにかく「圧力」を言っているわけですが、圧力だけで平和の展望は開けないと思います。どうしても韓国、北朝鮮、アメリカ、日本、中国、ロシアの6カ国での話し合いをしないとこの問題は解決できないと思います。アメリカや日本は、とにかく北朝鮮の非核化が必要だと言います。私も北朝鮮の非核化は必要だと思いますし、現在の体制はおかしいと思います。しかし、北朝鮮の立場に立って考えて見たときに、日本と韓国はアメリカの核の傘の下にあるわけです。アメリカ、ロシア、中国は核を持っているわけです。北朝鮮だけがこれまで核がない状態でした。そこで核を持って核武装をしたということです。よって立つ根拠はいわゆる「核抑止論」です。
 アメリカや韓国は北朝鮮が核武装をするのは危険だと言いますが、北朝鮮の側からすればアメリカの核が一番危険だと思うわけです。しかしアメリカにとってはアメリカの核は「核抑止」であり、アメリカの核の傘に守られている日本は、アメリカの核抑止に守られていると思っている。北朝鮮が核抑止論をとってはいけないという理屈は、北朝鮮の側からは成り立たちにくいと思います。
 もし核抑止論が成り立つなら、世界中の国々が核を持つことによって核抑止が働いて、世界中はハッピーで平和ということになります。でもそんなことはあり得ません。核は全面的に廃止するより方法はないのです。だからICANの主導の下に「核兵器禁止条約」ができたのです。 前文に書かれているように、「核抑止論そのものが破綻している」という現状認識のもとに「核兵器禁止条約」ができたのです。

 現実に北朝鮮の問題はどういう形で解決していくのかというと、一つは女性9条の会の会員である本尾良さんなどと「非核条約をつくろう」と、一九九四年に北朝鮮が始めて核開発をしたときに市民運動を立ち上げ、国内では「非核三原則」を法制化させよう、東北アジアには「非核条約」をつくろうという運動をして、条約案もつくったのです。
 私は、これは国際的な非核条約に劣るとは思えません。そういう運動を私たち日本の側から提起していくことだと思います。北朝鮮の核開発ないしはミサイル開発を止めさせるためには、まず交換条件としてアメリカに核の先制使用を止めさせる。「アメリカ側から北朝鮮に対して核攻撃をすることはいたしません。核使用をすることはしません」ということを約束させることです。
 ところがアメリカ国内でも、それが北朝鮮が話し合いのテーブルに着く条件ではないかという意見が出ていたところ、どこかの国の首相がそれを押さえた。「それでは核の傘が有効性を持たなくなるから止めてくれ」と言ったというのです。とんでもない話です。そういう状態の下で北朝鮮に非核化を要求するのはノーマルではないと思います。中国は「核の先制使用はいたしません」と言っています。核保有国はお互いに核の先制使用はしないという約束をすると同時に、核軍縮をはっきりとやっていく。それをしない限りは北朝鮮の核開発を抑えることはできないと思います。逆にそういうことをすれば、正当性はこちら側にあって北朝鮮にはなくなる。今の段階では残念ながら北朝鮮が核開発をすることに対して、それを阻止する正当な理由はアメリカや日本にはない。こちらだけ核を持っていて「お前は持つな」と言ったって、それは理屈に合わないと思うのです。アメリカや中国、ロシアのような核保有国が、北朝鮮に対して核の先制使用をしない、合わせて軍縮をやっていくということを言って、日本はアメリカの核の傘から離脱して、非核条約を、朝鮮半島と日本を含めた形で締結する。核保有国が核使用をしないことを保障するという具体的なプランを提示することによって話し合いのテーブルを設ける。それが、私なりに憲法の立場から北朝鮮問題を解決していく上の一つの方策であると考えています。
 圧力、圧力、圧力では、『窮鼠猫を噛む』ではありませんが、北朝鮮から暴発するかも知れません。それよりアメリカが北朝鮮に武力攻撃をするかも知れません。それを私たちは止めなければいけないのです。アメリカは軍事攻撃をしたからといってそれほどの被害はないのですが、韓国と日本が大きな被害を受けるのです。日本の原子炉が攻撃されたら一体どういうことになるのか、そのことを考えただけでも、トランプ大統領に対して、ともかくアメリカによる軍事的な先制攻撃は止めてくれと、今の韓国のような形で、ともかく和平のテーブルためのステップを踏む用意をするということを安倍首相が言わなければいけないのです。それなのに韓国の大統領が悪者になっているのです。マスコミもそういう方向で情報を流している。それは本当の意味で私たちの生活や命を考えたことになるのかということをじっくりと考えていく必要があると思います。
 北朝鮮問題も言ってみれば、日米安保体制の下で、日本がアメリカと北朝鮮との紛争に巻き込まれている状況です。本来、日本と北朝鮮とは敵対関係にはない筈です。九条を改憲することの持つデメリットを考えた場合、北朝鮮を口実にして九条改憲を正当化するということはあってはならないのです。
 アジアの平和を維持して行くためにも、今年はぜひ九条改憲を阻止するための運動を、みなさま方一人ひとりが、近くの人達から声を上げていって、身の回りの人達の賛同を得られるようにしていきたいと思います。

感想より 

・「憲法9条」関係の意見は若者たち(男・女)に関心が薄い感じがします。世界の流れがアメリカ北鮮の問題が直接的で日本国憲法の動きが直接結びつくと考えていないようです。数名(10名位)に聞いたのですが、情けないことに「なるようにきりならないじゃないか」等、積極的に現在の改憲が現実に日本をどう捉えるべきかに対する自分自身の考え方が少ないのが残念です。戦争の悲劇、核の恐ろしさを直接受け止めていないのでしょうか。国民の意思をしっかり掘り起こす必要性を感じます。
・改憲の問題が私たちの生活に深く関係していることがお話しで良くわかりました。
 「自衛隊さんありがとう」とあるのを見て、戦争中の「兵隊さんよありがとう…兵隊さんのおかげです」を思い出し、あの時の暗い時代を思ってゾッとしました。
・「国防」がすべてに優先される社会になることを何よりもこわいと思います。改憲をとめないかぎり、私たちの生活は軍事のためにすべてを失ってしまうのだと思いました。
・山内先生のわかりやすい講演会に参加させて頂き勉強になりました。身近な人に知らせていかなければと思います。若い人が政治に無関心なのは、大人の責任もあると。他の集会に参加して聞いたところによると若い人は新聞を読まない、本を読まない、選挙で「自民党」しか知らないからだそうです。
・3号加憲がでれだけ大きな影響をもたらすのか、大変よく理解できました。何故、選挙で多くの国民が改憲派の議員に投票するのか不思議でならず怒ってばかりいましたが、今年は正念場、行動に出なければならないとの思いを強めました。 3000万署名の意気壮。出来る協力はしなければとの思いも強めました。

戦争に繋がる法律     

・国家安全保障会議を設置
        ─国会を通さず、米軍と共に軍事行動をすることを決めることが可能に。(2013年12月4日)

・「特定秘密保護法」の制定
        ─防衛、外交、警察にかかわるほとんどすべての情報を「特定秘密」として、これを漏洩すると処罰される法律。(2013年12月6日)

・集団的自衛権の容認を閣議決定
       ─自衛隊を「他国から攻撃されたときだけに認められる最小限度の武力」としてきた今までの政府見解を変えて、「同盟国の一方が攻撃を受けた時その国   の戦争に協力することができる」と、閣議だけで決定。(2014年7月2日)

・武器輸出の解禁
   ─「武器輸出三原則」を緩和、どんどん武器をつくり、輸出する方針が出 された。(2015年11月9日)

・共謀罪
        ─実際に犯罪が行われていなくても、犯罪を行うことを話し合っただけで罪が成立、逮捕することができる法律。(2017年6月15日)

・安全保障関連法(戦争法)
        ─大多数の憲法学者が憲法違反と言い、野党各党や、多数の国民が反対する中、2016年9月19日に強行採決よって成立した法律。
      自衛隊法など10の法律をまとめたもので、日本ではなくても日本の仲間(アメリカなど)が攻撃された場合、日本はその仕返しの攻撃ができる
   よう になり、日本が戦争に巻き込まれる可能性が大きくなる。
     
※これらの法律を見るだけでも、安倍政権が、日本を「アメリカと協力して戦争ができる国」にするための準備を着々と進めてきたことがわかります。   


わたしの町の女性9条の会─憲法9条・大田女性の会

                                                                                       事務局・金子典子  

 大田女性の会が発足したのは1997年11月なので20年を超えました。 当時、新ガイドラインが発表されて、これって戦争準備じゃない?!とびっくりして、友達と相談して「新ガイドラインに反対する大田女性の会」を発足させました。この運動は2年後の5月に女性たち300人を集めた蒲田駅頭宣伝にまで発展しましたが、新ガイドラインが有事法制として全部具体化されたため、名称を’04年9月に現在のように変えて活動を続けています。
 駅頭宣伝は、発足して4か月後から毎月1回続けています。当初は女性の会だけでやっていましたが、今は大田九条の会や区内の九条の会にも呼びかけて合同でやっていますが参加者は殆ど女性たちです。宣伝では九条そのものが書かれた独自のカラーのチラシ(裏には「あたらしい憲法の話」の九条部分)を配布し3000万署名を集めています。
 もう一つ続けているのはニュースの発行で、これも発足当時から毎月発行し、途中で欠けた時もありますが、今年二月号で二五五号になりました。配布方法はメールとFAXで届けています。内容はその時々の問題点をできるだけやさしい言葉で書くように心がけ、宣伝の様子を紹介し、区内の九条の会の催し物などを紹介しています。
 昨年は、自爆連が自民党の考え方をユーモアたっぷりに書いた「あたらしい憲法草案のはなし」をテキストに「リビングで憲法カフェ」をのべ58回開きました。テキストの後ろには現憲法と自民党の憲法改正草案も紹介されているので、比較しながら進めました。現在の憲法に感動することがしばしばで、自民党草案の中身を知れば、こんな改悪は絶対に阻止しなくては!となりました。
 三月一日には映画「九条を抱きしめて」の上映会を計画しています。駅頭宣伝でのチラシの受け取りも、三〇〇〇万署名も四人に一人の署名を集めるにはほど遠い状態です。焦りや悩みは続きますが、私たちが諦めたら怖い国になる!「継続は力なり」を信頼して粘り強く続けるしかないと励まし合って活動しています。


 

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